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「自分」の壁

  • 著者:養老孟司
  • 出版社:新潮社(新潮新書)
  • 出版日:2014
  • ISBN:9784106105760

書評

『バカの壁』の先へ。自分探しに走るより、“本物の自信”を育てよと説く養老孟司の思考エッセイ。自分とは「地図の中の矢印」にすぎない――そんな比喩で視野を外へ広げ、脳・死・仕事・情報の話題から頭の中の壁を越えるコツを示す。モヤモヤの軸合わせに。

『「自分」の壁』は、「本当の自分」探しに疲れた人へ、視点を内側から外側へ戻してくれる一冊。養老孟司は「自分とは地図の中の矢印」とたとえ、固定された“本体”を掘り当てるより、状況の中で向きや位置を確かめるほうが現実的だと言う。脳、医療、死、情報化、仕事、絆など話題は多岐にわたり、どれも「壁」は頭の中に立つことを繰り返し示す。たとえば仕事はタスクだけでなく“厄介な状況ごと背負うもの”だ、という捉え直しは、責任感に押し潰されそうな時ほど効く。SNSやニュースに振り回される感覚も、情報の洪水そのものより、受け取り方の癖が壁を厚くする、と気づかせてくれる。
読後に残るのは、自己肯定の甘い言葉より、余計な力みが抜ける感覚だ。おすすめは、刺さった章を一つ選び、①自分が守ろうとしている前提②それが生む行き詰まり③外側(他者・環境)を入れた別の見方、を3行で書くこと。思考の可動域が広がり、日常の判断が少し楽になる。