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死の壁

死の壁

  • 著者:養老孟司
  • 出版社:新潮社/新潮新書
  • 出版日:2004/4/17
  • ISBN:9784106100611

書評

人間の死亡率は100%——そこから目をそらす社会に「死」を真正面から持ち込む。医療・安全・戦争・殺人の議論を、解剖学者らしい冷静さでほどき、「なぜ死を遠ざけるほど生が不安になるのか」を考えさせる一冊。怖さを煽らず、むしろ安心して生きるための“思考の壁越え”になる。

【どんな本?】
『バカの壁』の次に出た新潮新書で、「死」を避けて生きる現代の感覚を問い直す。がんや感染症の恐怖、医療への過信、死を生活から隔離した社会のあり方などを題材に、死の周辺にある不安の正体を探っていく。著者自身の経験(父の死)や、解剖学を専攻した理由にも触れながら、“死を考えること”が生の見え方を変えると語る。

【刺さるポイント】
本書の強さは、道徳や励ましでなく「死を見ない仕組み」を解体するところ。死を遠ざけると、逆に「ゼロリスク幻想」が肥大し、少しの危険や不確実さにも心が持っていかれる。すると、医療や制度に“安心の丸投げ”が起き、議論が極端になりやすい。ここを、具体例と問いでじわじわ戻してくるので、読後は“死の話”というより「生き方の現実感」が残る。

【活かし方】
刺さった箇所を1つ選び、「自分が避けている不安は何か」「今日できる現実的な一手は何か」を各1行でメモすると、読書が内省で終わらず行動に接続します。