蔵書検索

← 一覧に戻る

漫画方丈記 日本最古の災害文学

  • 著者:鴨長明(著)/信吉(漫画)
  • 出版社:文響社
  • 出版日:2021
  • ISBN:9784866514079

書評

『方丈記』を“災害の記録”としてマンガ化。大火・大風・飢饉・地震、そして世の不安の描写が、現代にもそのまま重なる。小さな家に移り住み、執着をほどいて心を整える道筋まで一気読み。絵で状況が立ち上がり、古文が苦手でも理解できる。養老孟司の解説+原文付き。

『方丈記』は、火事・大風・飢饉・地震など、都を襲った災厄を淡々と記しつつ、「では、どう生きるか」を問い直す随筆だ。本書はその骨格を崩さず、災害パートの迫力と、後半の“住まいを小さくする”思想をマンガで可視化する。災厄の描写はニュース映像のように生々しく、社会不安が生活を削る感覚が、時代を越えて伝わってくる。だからこそ、作者が最後にたどり着くのが、広さや所有ではなく、執着を減らして心を守るという結論だと腑に落ちる。
マンガだからテンポよく読める一方で、巻末に原文も収録されていて、気になった章をそのまま古文で確かめられるのが嬉しい。さらに養老孟司の解説が、現代のミニマリズムや“生きづらさ”の感覚と古典をつなぎ、読む目的をはっきりさせてくれる。 
読み方のコツは、災害描写を「他人事の記録」として流さず、自分の生活の脆さ(住まい・仕事・貯え・人間関係)に置き換えること。すると後半の“足るを知る”が説教ではなく、危機管理の知恵に変わる。防災袋を点検したくなる本でもある。